針灸とは、身体に鍼や灸を用いた刺激を与えることで、多様な疾病への治療的な介入や健康増進を目指す医療技術である。中国医学系伝統医学で用いられる治療法の一つで、補完・代替医療とみなされることもある。諸子百家の時代の中国の文献に鍼灸治療が見られる。理論が体系化されたのは、戦国から後漢(B.C.5世紀〜A.D.3世紀)にかけての中国であり、最初の理論体系として後漢末(200年前後)に成立した『黄帝内経』(生理学ないし一般病理学についての『素問』と鍼灸理論が扱われた『霊枢』)と『黄帝八十八難経』(『難経』)がある。
身体へ加えた様々な物理刺激による治療的経験則の数世紀に亘る集積であり、これを技術論として構築した技法を「鍼灸」と呼ぶ。近世まで、生薬方と共に東アジア各国の主要な医療技術として発展した。特に17-19世紀の日本において鍼灸は独自の発展を遂げ、現在世界的に活用される鍼灸技法の基盤を形成した。日本では「医師」の他「はり師」「きゆう師」がこれを行える。20世紀後半よりは欧米においても有用な医療技術として認識されて活用されるようになった。